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ライダーは風と共に生きる
運命にある。身体で感じ、
それを受け止める。
風は敵にも味方にもなる。
ライダーは、常に“風”にさらされている。
大半は、自らモーターサイクルを走らせ、そのスピードで生まれた“風圧”で、これに立ち向かっている。
空気は意外にも粘性があり、まとわりついてずしりと重い。
時速100kmは一般的な風速で表すと約27.8m/s。台風並みの暴風だ。
不思議なことに、自ら進んでいる通常走行と、止まっていて風を当てる風洞実験では、
同じ速度・風速でも風洞実験の方が風は重たく、身体にまとわり付くように感じる。
能動的な行動は、受動的なことより、心が前向きで軽いからだろうか。
風から身体を守るには、ライディングウエアの大きな役割だ。
レーシングレザースーツは、当然エアロダイナミクス、運動性、プロテクションを高い次元で実現している。
ストリート用ウエアでは、ST-Xレザーを除き、要所を締めたエアロダイナミクスになってる。
要所を締めるというのは、バタ付きを抑えるためアームアジャスターで“締める”ので、
ある意味当たっている。
風から身体を守るばかりではなく、風を積極的に利用して身体を冷やすこともある。
エアロダイナミクスとクーリングシステム。
空気の移動と温度の変化を効率良く利用する術を、ライダーは身に付けている。
“風”は、敵にも味方にもなる。
ミシガン湖から吹き抜ける風が、この街をWindy Cityと呼ばせている。
アメリカ・イリノイ州シカゴ。風はたしかに強いけど、
ボストンやバッファローやミルウォーキーの方が平均風速は高い。
いずれも風速16m/sを超えるから、風の強い街に違いはない。
Windy City にはもうひとつ、風=シカゴ市民の中身のない言葉というシカゴを揶揄した意味があるという。
さらに言うならマイケル・ジョーダンとシカゴブルズと共に巻き起こした熱狂の嵐は、
バスケットボール(NBA)の革命だった。1980s~1990sにバスケットボールの神様は実在した。
その熱い風は、シカゴに吹いた。Windy Cityの伝説だ。
風が名前に付く場所は、日本にも数多い。
たとえば南風。「はえ」と呼んで、沖縄県と長崎県にある。
北風もある。「ならい」と呼んで、岩手県奥州市にあるし、東京都伊豆大島にもある。
東風は、静岡県安倍郡、愛知県知多郡に、西風はこれまた「ならい」と呼んで、宮城県仙台市にある。
風合瀬は、「かそせ」と読む。青森県西津軽郡深浦町にある。
五能線と国道101号に沿った日本海に面した小さな漁村だ。
アメリカ西海岸にはUSハイウェイ101があるが、五能線と、日本のルート・ワン・オー・ワン国道101号は、
日本海沿いに秋田県八郎潟から青森県鰺ヶ沢(あじがさわ)付近まで続く。
風合瀬は鰺ヶ沢にほど近い。
八郎潟を見下ろす寒風山(かんぷうざん)、筑波山の風返峠(かぜかえしとうげ)、
切り立った断崖で有名な屛風ヶ浦(びょうぶがうら・千葉県)……。
どこも強い風の厳しさから付いた名前ばかりだ。
風に名前を付けるのは、世界中で実に多い。
コナ(Kona)はハワイで吹く南寄りの風で、暴風だ。
サンタ・アナ(Santa・Ana)は南カリフォルニアに吹く乾燥した風で、山林火災を引き起こす要因になる。
エキゾチックな親しみがあるネーミングであっても、それを意味する風とは限らない。
ただ、人々はその営みの中で、見えない空気の移動に生き物のように名前を付けていくのだ。
そんな場所で、そんな風に吹かれて、磨かれるように、ライダーは優しくなっていくのかもしれない。